パリの食堂
気取ったフレンチレストランなんかじゃない。
私が愛してやまないビストロがある。
ちょっとお腹が空いたときも
腹ペコでたまらないときも
普段着のまま、ぶらっと一人で入って。
ねえ、シェフ。
ちょっとおいしいもの出してよ、
なんて、気軽に注文する。
友達と行くのもまた、楽しい。
おいしいねぇ、なんておしゃべりしながら
たらふく飲んで、たらふく食べる。
毎日食べても、飽きたりなんかしない。
その名は、ビストロ・トム。
ここの店主は、ちょっと変わり者。
とびっきりの料理を作るが、
無口で接客が苦手。
最近、お客さんが増えすぎて、しかも
いつもはフロアに出てる私も、他の仕事で
不在がちだったため、一人で頑張っていたようだ。
慣れない出張料理も続き。
新作料理も続々出して。
とうとう疲れて、大事な大事なお客さんに
けんかをふっかけた。
今は、店の奥に閉じこもって
店員の私とすら話をしない。
いつもはスタッフとは、話がはずんでいるように
見えるが、実は一方的に私のおしゃべりに
つき合わせていることも多く。
一言も口をきかなくって
淋しかったり腹が立ったりもするけど
最近私も、ずいぶん甘えていじわるなことを言っていた
自覚はあるので我慢する。
私はアンタのオカンじゃないよっと
言いたくもなるが、甘えてるのはお互い様だから
仕方がない。
でも、どうやら、料理を作る気はあるらしい。
ねーえ、シェフ。
接客くらい、私がするからさ。
また、旨い料理、作ってよ。
他のどんな料理食べたって、あなたの料理の
代わりになんて、ならないの。
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ビストロとフレンチレストランの違いはこちらで。
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◆紅茶グマ焼菓子工房
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